魔のピーリングバックSLAP(関節唇)損傷とは・・・
こんにちは。
今回は肩関節障害のSLAP(関節唇)損傷についてお話させていただきます。

SLAP損傷は、投球などのオーバーヘッドスポーツ(頭上に腕を上げる競技)に特有の疾患を言います。

ピーリングバック・メカニズム(ねじれの力)
関節唇損傷は野球の投球動作において、肩を最も後ろまでひねり込むレイトコッキング期に上方関節唇に「ねじれ」のストレスがかかることが、最も有力な原因とされています。

牽引力(トラクション)メカニズム これは主に、ボールを投げ終えた後の加速期から減速期
にも関節唇損傷が発生すると考えられています。
• 動作と力の流れ
ボールを投げ終えた後、腕を急激に減速させる際、上腕二頭筋が強く遠心性収縮(伸びながら力を出す)します。
・損傷の発生
この上腕二頭筋の強い収縮(牽引力)が、その付着部である関節唇を強力に引っ張り、損傷・剥離を引き起こします。
上方関節唇が剥がれる理由
1. 上腕二頭筋長頭腱の付着部であること
・構造的弱点: 力こぶの筋肉である上腕二頭筋は、その腱(長頭腱)が関節内を通って、まさにこの上方関節唇に付着しています。

・集中する牽引力
肘を曲げたり、腕を上げたり、特に投球の減速期(投げ終わりの急ブレーキ)で上腕二頭筋が強く収縮すると、その強い牽引力(引っ張る力)が関節唇に直接集中します。
・剥離の原因
この牽引力が繰り返しかかることで、関節唇が土台である肩甲骨の関節窩から徐々に剥がれてしまい、SLAP損傷(多くはType II)に至ります。

・動作
投球の最大外旋位(コッキング期、腕を最も後ろにひねった状態)では、上腕骨頭(腕の骨の先端)が関節窩に対して後上方に移動し、関節が大きくねじれます。
・力学: このねじれの力(トルク)が上腕二頭筋長頭腱を介して伝わり、腱の付着部である上方関節唇を後上方に「剥がす」ように作用します。
*イラスト赤丸:上方関節唇

・慢性的なストレス: この「Peel-Back(剥ぎ取る)」ような力が、投球を繰り返すたびに加わることで、上方関節唇の損傷を引き起こします。
関節窩の形状と安定性 肩関節は、人体の中で最も可動域が広い関節ですが、その分、関節窩(受け皿)が浅く、不安定です。
関節唇は、その浅い関節窩の縁を深くして安定性を高める役割を担っています。
・不安定性の代償
肩関節の不安定性(特に投球による靭帯の緩みなど)があると、上腕骨頭が不安定に動くため、関節唇全体、特に上腕二頭筋長頭腱が付着する上方部に、より強い剪断力(こすり合わせる力)やねじれストレスが加わりやすくなります。
投球動作による靭帯の緩み(動的・静的安定性の変化) 肩関節の安定性は、筋肉(ローテーターカフなど)による動的安定性と、
関節包や靭帯による静的安定性によって保たれています。
投球動作を繰り返すことで、この静的安定性が変化します。
緩みが生じる主な靭帯(静的安定化機構) 投球動作によって主にストレスを受け、緩みやすい靭帯組織です。
・関節上腕靭帯(Glenohumeral Ligaments: GHL)
肩関節の安定性を保つ上で非常に重要な役割を果たす靭帯群です。
これらは肩甲骨の関節窩と上腕骨をつないでおり、関節包(肩関節全体を包む袋状の組織)の前面と下部を補強しています。
関節上腕靭帯は主に以下の3つの束に分けられます。
・上関節上腕靭帯(Superior Glenohumeral Ligament; SGHL)
上腕骨頭の特定の動きを制限し、関節を保持する役割を担っています。
・下関節上腕靭帯(Inferior Glenohumeral Ligament: IGHL)
肩関節を最大外旋(コッキング期)した際に、上腕骨頭が前方に脱臼するのを防ぐ上で最も重要な靭帯です。
・中関節上腕靭帯(Middle Glenohumeral Ligament: MGHL)
特に投球動作では、腕を最大限に後ろにひねるコッキング期において、上腕骨頭が前下方へ移動しようとする力が発生します。
この力を防ぐために下関節上腕靭帯が過度に引き伸ばされ、繰り返しストレスがかかることで、徐々に緩み(弛緩)が生じます。

靭帯の緩みによる影響 靭帯が緩むと、肩関節の静的安定性が低下します。
・肩関節の不安定性(Instability)
靭帯が伸びることで、投球時に上腕骨頭が必要以上に大きく動き(微小不安定性)、関節窩(受け皿)の中心に骨頭を保つ能力が低下します。

・SLAP損傷や腱板損傷のリスク増加
不安定性が増すことで、関節唇(特に上方)や腱板(ローテーターカフ)に剪断力(こすれる力)やねじれのストレスが集中し、SLAP損傷や腱板損傷を引き起こすリスクが高まります。
関節包の後方タイトネスとの関連
興味深いことに、投球を繰り返すアスリートでは、前方の靭帯が緩む一方で、肩関節の後方の関節包や後方靭帯は、投げ終わりの急激な減速期
(フォロースルー期)のストレスによって炎症を起こし、瘢痕化(固くなること)が進み、逆に硬く(タイトに)なる傾向があります。
GIRD (内旋可動域制限)
投球側(利き腕)の肩関節内旋可動域が著しく制限されている状態を言います。
これは後方組織(棘下筋、小円筋、後方関節包)の硬さ(タイトネス)が肩関節の内旋(内側にひねる動き)を制限させています。
内旋の制限を代償するため、投球時に肩がさらに外旋され、関節唇への「ピーリングバック」ストレスが増大します。


まとめ
・前方: 投球による過度な外旋ストレスにより、前方(特に下)の靭帯が緩む(弛緩)。
・後方: 投げ終わりの減速期ストレスなどにより、後方の関節包や靭帯が硬くなる(拘縮・タイトネス)。
この「前方の緩み」と「後方の硬さ(GIRD)」のアンバランスが、肩関節の動きを乱し、投球障害肩の主要な発症メカニズムの一つと考えられています。
<当院のSLAP(関節唇)損傷に対しての施術戦略>
・肩前方組織
三角筋前部、上腕二頭筋、前方関節包に対しての筋膜リリース!
オーバヘッドスポーツで繰り返し使うことで上腕二頭筋は硬くなり働きにくくなっているケースが多いです。
触診すると上腕二頭筋長頭腱が硬く肥厚している方もいます。
結帯動作(背中に腕を回す)
親指が肩甲骨ラインより上がるかどうか?
利き手(投球側)は硬くなりやすい。
腕が後ろに回りにくい方は上腕二頭筋、三角筋前部、前方関節包が硬いので施術ポイント!
GIRDが起きていないか?
投球側(利き腕)の肩関節内旋可動域が著しく制限されていないか?
横向きで寝て内旋可動域をチェック!
床に手がつきにくくなっている場合は危険。
ターゲットは下記3つです!
・後方組織
棘下筋、小円筋、後方関節包
・肩甲骨と上腕骨を連動させて肩の関節位置(アライメント)矯正
上腕骨の骨頭の位置を求心位に戻すことで①痛み、②可動域改善、③筋出力が上がるように整えます。
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院長 善林 伸介(ぜんばやし しんすけ)
<国家資格>
柔道整復師、鍼灸師

コンディショニングトレーナー、メディカルトレーナー
身体に優しい施術を心がけています。成長期の学生のケガをしない、させない為のトレーナー活動に従事。
最近のライフワークは「健康寿命をの延ばす施術と運動を追求」です。
地域の魅力ある健康の発信地となれるよう微力な柄に精一杯お手伝いさせていただきます!


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<当院実績>
卓球日本代表選手、水泳ジュニアオリンピック優勝選手,水泳インターハイ出場選手,水泳国体出場選手,社会人野球選手,野球独立リーグ選手,甲子園出場選手,水泳ジュニアオリンピック選手,高校サッカー選手権出場選手,女子サッカーインターハイ出場選手,Fリーグ(フットサル)プロ選手
女子フットサル東京代表選手,野球U-23大学日本代表選手、野球U-12日本代表選手など。
スポーツ選手も多く来院いただいております‼︎
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